もっと犬を抱っこしてやればよかったなという話

飼っていた犬が死んだ。
といっても少し前の話だ。今でも一緒にいた時間を思い出したり、
同じ犬種の写真を見たりしては、うちのもこんな風に可愛かったなあ、
もこもこしていたなあ、などということを思い出して懐かしんでいる。

私が中学生くらいの時から実家で飼っていた犬で、
私は今はもういい大人なのでひとりで暮らしている。
実家を離れている間に亡くなってしまった。長寿だったので、大往生だった。

年に何度か帰る度に、だんだん目が見えなくなったり、ボケたり、
後ろ脚に力が入らなくてうまく歩けなくなったりと、老化が進んで目に見えた。
だからいつも、次はもしかしたらもう会えないかもしれないな、これが最後かもという不安とともに帰省していた。

実家で飼っている犬だったし、親がメインで世話をしていた。
離れて暮らすようになってからもう数年立っていたから、犬にとっては
すでに私は家族の一員ではなかっただろうし、私も抱っこをするのが
はじめから苦手だったのであんまり、抱っことかしてやれなかった。

くっついて寝てきた時は一緒に寝たり、むっちゃ撫でてやったり、
犬だってマッサージされたら気持ちいいだろうと思って肩を探して揉んでやったり
そんなことはよくやってたけど。


犬が死んだその日、昼に心臓が止まったと母親から連絡があって、
その日の夜急いで実家に帰った。
幸い、次の日が休みだったから、夜は家でゆっくりすることができた。

犬の好きだったクッションに横たえてやって、
本当に寝てるみたいだったのに、触ったらいつもみたいにあったかくなくて、
冷たくて、固くてちょっと驚いたのを覚えている。
でも本当に表情や体勢は、いつも寝ている時となんら変わりなかったんだ。

母親が、家にいる間や、火葬場に行くときも、ずっと犬を抱っこしていたんだけど
私は犬が生きていた時ほとんどあんな風に抱っこしてやらなかったなあ、って
そればっかりを今でも後悔している。

将来、いつか自分でも猫や犬を飼いたいなと思いながら
今日もネットでかわいいペットたちの写真を見てストレスを癒すだけの日々だけど、
もしその日がきて、次にうちにくることになった子は
いっぱい抱っこしたり、お話したいなと思う。